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佐賀家庭裁判所 昭和26年(家)1340号 審判 1954年11月24日

申立人 友田ツネ(仮名)

相手方 友田四郎(仮名) 外六名

主文

本籍 佐賀市○○町大字○○○○○○○番地の一亡友田三郎の遺産を下記のとおり分割する。

一  別紙目録第一の不動産は申立人及び相手方四郎の共有(持分各二分の一)とする。

二  同目録第二の不動産は申立人の所有とする。

三  同目録第三の不動産は相手方四郎の所有とする。

四  同目録第四の不動産は相手方正雄の所有とする。

五  同目録第五の不動産は相手方スミの所有とする。

六  相手方四郎、同正雄をして他の共同相続人に対し下記各金額の債務を負担させる。但し相手方四郎の負担額は金一、七四二、〇〇〇円、相手方正雄の負担額は金二〇八、〇〇〇円とし、各上記負担額に比例して各債務の支払をしなければならない。

上記支払時期は相手方スミに対する分は直ちに支払うものとし、その他は各これを七分し今後七ヶ年間に各その一宛を年賦支払うものとする。

(一)  申立人に対し金八一三、〇〇〇円

(二)  相手方サダ子に対し金三七五、〇〇〇円

(三)  相手方雄一に対し金三七五、〇〇〇円

(四)  相手方スミに対し金一二、〇〇〇円

(五)  相手方由子に対し金一八七、五〇〇円

(六)  相手方正也に対し金一八七、五〇〇円

七  相手方四郎は

申立人に対し別紙目録第二の不動産を

相手方正雄に対し同目録第四の不動産を

相手方スミに対し同目録第五の不動産を

それぞれ引渡さなければならない。

本件手続費用は当事者全員の平分負担とする。

理由

本件申立の要旨は被相続人友田三郎は昭和二十五年七月○○日死亡し、その相続が開始し、申立人は上記被相続人の妻、相手方四郎は長男、同正雄は二男、同山田サダ子は二女、同雄一は三男、同スミは三女、同由子及び同正也は亡長女ハナの子として上記被相続人の遺産を共同相続し該遺産は申立人及び相手方等の共有となつたが、実際は相手方四郎が殆んど全財産を管理収益しており被相続人存命中から申立人夫婦と相手方四郎との折合が悪く別居していた程で、その死後は申立人と上記相手方との間柄は益々悪化し、今後とうてい円満な同居生活は望めない状態にあるのでこの際各相続人において遺産を分割し、それぞれ将来の安定を得たいと考え、当事者間において遺産分割の協議をしようとするが、相手方四郎が応じないため、協議による分割ができないので、こゝにやむを得ず遺産である別紙目録の不動産の分割を求めるため本申立に及ぶというのである。

本件につき当裁判所のなした事実の調査並に証拠調の結果により当裁判所の認定した当事者の身分関係、職業、生活状態その他の事情並に本件遺産の価格は次の通りである。

一  被相続人友田三郎の死亡日時及び同人と各当事者との続柄は前記申立人主張のとおりである。したがつて各当事者の相続分は、申立人が三分の一、相手方四郎、同正雄、同サダ子、同雄一、同スミが各九分の一、相手方由子、同正也が各一八分の一ということになる。

二  被相続人は、別紙目録の宅地建物及び農地を所有し、永年農業により一家の生計を立てて来た者である。

(一)  申立人は上記被相続人の妻として、これを内助し来つた者で他に職業はなく、本年六十九才の老令に達し、相手方四郎及びその家族と同居中であるが、本件遺産分割問題をめぐり上記相手方との折合は甚だ悪い。

(二)  相手方四郎は本年四十三才で被相続人死亡前からその農業経営の中心となつて実際の農耕に従事していた者であり、その死後も引続き別紙目録農地の全部を管理経営し、妻及び一男三女の家庭と共に別紙目録第一の家屋に居住する。

(三)  相手方正雄は本年三十六才で、○○○○刑務所看守として勤務し、妻及び一男三女の家族と共に別紙目録第四の(六)の家屋に居住する。

(四)  相手方サダ子は本年三十九才で昭和十一年三月山田政明と婚姻し、終戦後満洲から引揚げ、肩書地で炭礦に稼働する夫と同居し、夫婦間に一女がある。

(五)  相手方雄一は本年三十四才で警察官として勤務し、妻との間に一女があり、なお養女である相手方由子も共に肩書地に居住する。

(六)  相手方スミは本年三十一才で、申立人と共に相手方四郎居住家屋に同居し、佐賀市内洋裁店に勤務する。

(七)  相手方由子は本年二十一才、両親に死別し、昭和二十五年三月叔父である相手方雄一夫婦の養子となり、これと同居中である。

(八)  相手方正也は本年十八才で、上記由子の弟であり、姉と共に相手方雄一夫婦の養子となり、現在は佐賀○○高等学校在学中で申立人及び相手方スミと同居中である。

三  本件遺産である別紙目録不動産の価格は同目録記載(一、〇〇〇円未満は切捨)のとおりで、その合計額は金三、三七六、〇〇〇円である。

以上認定の事実に基き本件遺産分割の方法について考えるに遺産の大部分が農地である点に鑑み、多数の共同相続人に現物をもつて分割することは相当でないと認められるので相手方四郎に農地の大部分を取得させて被相続人の遺業を承継させることとし、申立人並に相手方正雄、同スミにそれぞれ農地の一部を取得させ(申立人については年令及び生活状態に照らし農地の取得分は僅少に止める)申立人及び相手方四郎の現住家屋及び敷地は上記両名の共有とし、相手方正雄の現住家屋及び敷地は同人の単独所有とし、その余の共同相続人には現物分割をなさず、相手方四郎同正雄が上記分割取得の結果各その相続分を超過した額につき、上記両名をして他の共同相続人(申立人及び相手方スミに対しては各相続分と前記分割取得額との差額につき)に対し金銭債務を負担させることとし、その債務額が相当多額に達するので、支払の時期に相当の猶予を認める(但し相手方スミの分は少額であるので直ちに支払うべきものとする)こととするのを、最も相当であると認める。なお前記の如く本件農地はその全部を現に相手方四郎が占有耕作しているものであるから申立人及び相手方正雄、同スミの各分割取得分についてはそれぞれこれが引渡を命ずべきものとする。よつて手続費用の負担につき家事審判法第七条非訟事件手続法第二十七条を適用して主文の通り審判をする。

(家事審判官 岩永金次郎)

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